あなたが私を竹槍で突き殺す前に

李龍徳「あなたが私を竹槍で突き殺す前に」

最近読んだ中で最も挑発的な小説。緊張感、スピード感のある展開はエンタメ性豊かだが、物語は非常に重く、読者に差別や社会運動について考えることを強いる。

物語の舞台は排外主義者が勝利を収めた日本。在日コリアンへの嫌悪が社会に行き渡り、通名禁止や、外国人への生活保護違法化が政府によって定められた。そうした中、社会の空気を変えようと、ある計画を企む在日三世の青年を中心に物語は進む。

ここに描かれる社会はグロテスクだ。いくらフィクションでも、極端で、単純すぎるかもしれない。Black Lives MatterにAll Lives Matterで返すような無自覚な抑圧者や、トーンポリシングに熱心な自称常識人は悪趣味と言うだろう。でも無自覚な抑圧が、苛烈な差別に一瞬で変わることがあることを歴史は明らかにしている。冷静ぶることは現状に加担することでもある。

読者を挑発し、考えるよう迫るのはフィクションの役割の一つだ。

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