本谷有希子「嵐のピクニック」
大江賞受賞作。過剰な自意識をドロドロとコミカルの間で書くと上手い作者だが、ここに収められた13本の短篇は、寓話のような、シュールレアリスムのようなものが中心。ボディビルに目覚める主婦の話や、動物園の猿山で起こった奇跡、悪の組織と戦う隣家の少女など、1作ごとに作風が変化して飽きさせない。作家としての力量を感じさせる一方、完成された短篇小説というよりは、創作メモのような印象(即興的に書き上げたらしいので、当然かも)も強く、ここからもっと発展させることができるのではという物足りなさも。