ダーク・スター・サファリ カイロからケープタウンへ、アフリカ縦断の旅

ポール・セロー「ダーク・スター・サファリ」

米国の作家ポール・セローは若い頃、東アフリカで教師をしていた。作家として名を成し、60歳を前にカイロからケープタウンへと大陸をバスと鉄道で縦断することを思い立つ。コンラッドの「闇の奥」を手に、貧困と格差、人種対立の続く“暗黒星”の旅に出る。

長大な旅はその記録も長大になった。気軽に読める旅行記ではない。60年代にマラウィとウガンダに住んでいたセローは、アフリカは衰退したと繰り返し書く。欧米の援助団体をこき下ろし、住民の自助努力の欠如を非難する。60年代に相次いで独立して自決権を得たはずの国々は、その後、独裁者による圧制や内戦を経験し、都市部は治安悪化の一途をたどった。それらの土地に希望を託した、かつての教師は現在のアフリカの姿に苛立ちを隠さない。

ヘミングウェイをアフリカで経験できる最も底の浅いものだけを好んだ人物と罵り、飛行機で動物保護区だけを見て帰る観光客を軽蔑する。セローの旅行記の特徴でもあるが、誇張やステレオタイプの描写が散見され、さらに、自分以外は皆バカ、という態度も滲む。その“芸風”をユーモアと感じるか、欧米人らしい傲慢さ(そもそもアフリカをダークスターと表現して僻地扱いするのも欧米中心の世界観といえる)と感じるかは分かれるだろう。それでも、セローの鋭い筆は紛れもない今のアフリカを書き留めている。アフリカを訪れたことのない人には驚きに満ちた読書体験になるだろうし、アフリカをよく知る人にとっても読む価値のある記録となっている。

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