ファミコンとその時代

上村雅之、細井浩一、中村彰憲「ファミコンとその時代」

ビデオゲームの誕生から、ファミコンの登場、流行まで。主著者の上村雅之氏はファミコンの開発者の一人であり、まさにテレビゲームの正史と呼べる一冊。社会、経済の変化を扱った読み物としても非常に読み応えがある。ファミコンの発売30周年を迎えた2013年の刊。ファミコン世代にとっては、自分たちの時代を客観視するためにも必読の一冊。

米国で産声を上げたビデオゲームの歴史は、1958年のオシロスコープを使ったテニスゲームにまで遡る。72年のODYSSEYが、家庭用“テレビ”ゲームの嚆矢であり、ゲーム業界は80年代初めには無数のハード、ソフトがひしめくレッドオーシャンとなっていた。しかし、ソフトの粗製濫造はアタリショックを引き起こし、市場は壊滅する。米国内の業界の関心はPCへと移っていく。

一方、日本ではエポック社の「テレビテニス」(75年)が国内初のテレビゲームとして発売され、任天堂からも類似玩具が発売されている。やがてゲーム&ウォッチに主役が移り、その人気に陰りが出始めたところでファミコンが登場した(83年)。

アタリショックを教訓に、ソフトの流通をコントロールしたことでファミコンはプラットフォームとしての地位を確立する。年間の本数制限や、カートリッジの委託生産など、任天堂とサードパーティーとの契約についても詳しく書かれており、興味深い。任天堂側に強い権限のある契約はファミコン、スーパーファミコンに絶対的な地位をもたらしたが、それが後にプレイステーションにサードパーティーを奪われる一因となったのは衆知の通り。

巻末にファミコンを扱った当時の雑誌記事の見出し一覧などが資料として収録されており、これを見るだけでも面白い。

「ついに翳りが見えたファミコンブームの行方」(86年、創)
「これがドラゴンクエストⅡだ スーパーマリオをしのぐ人気ソフトを得てファミコン・ブームは死なず」(87年、週刊文春)
「やったネ!!『ドラクエⅢ』の最終画面を本邦初公開!!」(88年、FLASH)

など。エンディングを掲載したFLASHの記事が訴訟になったというのが今となっては笑える。

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