井上ひさし、平田オリザ「話し言葉の日本語」
井上ひさしと平田オリザの対談集。もとが雑誌連載のせいか、広く浅くという感じだけど、二人とも言葉にこだわってきた劇作家だけに色々と気付かされる視点が多い。
小説は個人とともに誕生し、古来からの演劇が表現できなかった緻密な表現を可能にした、その上で現在再び小説では表現できないものが出てきている……という指摘は、優れた小説家でもある井上ひさしが感じていた現代文学の行き詰まりが伺えて興味深い。
話し言葉を書き言葉にし、別の人間が再び発するという演劇の仕組みは、これも小説が忘れかけている言葉と文字の関係を見つめるという文学の原点だろう。言葉が流動的な現代だからこそ、その取り組みが再び新鮮な輝きを持つ。