辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

高野秀行「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」

食に関する名著はいろいろあるが、そこに並ぶ(と同時に異彩を放つ)一冊と言ってもいいだろう。

ゴリラにムカデ、タランチュラと、食材もさまざまなら、ヤギの胃液のスープや、豚の生き血の和え物、ヒキガエルをミキサーにかけたジュースなど調理法も多種多様。何をどう食べるかには人間の叡智、というのは大げさかもしれないが、人間の積み重ねてきた歴史が詰まっている。登場する料理の珍しさに目が行くが、食感や風味など、丁寧かつ的確(か確かめようがないけど)な表現で、なんとなく食べた気にさせる筆力がみごと。

海外だけではなく、日本の食べ物も幾つか登場している。最も致死性の高い部位をあえて食べるフグの卵巣などは、他の文化圏から見たら確かにクレイジーだろう。数年糠漬けしたら毒素が消える(wikipediaによれば今でも理由がよく分からないらしい)ことにどうやって気付いたのか、それまでにいったい何人が死んだのか。

「辺境メシ」とタイトルにはあるものの、実際に登場する地域は辺境というより、人々が普通に生活している土地が多い。「辺境のメシ」というより「メシの辺境」と理解した方がしっくりくる。食文化の豊かさ、面白さを実感できる一冊。

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