ヒッキー・カンクーントルネード

岩井秀人「ヒッキー・カンクーントルネード」

初めてハイバイの舞台を見た時、演劇ってこんなに面白いのか、と思った。
ハイバイは決して奇抜で新しいことをしている劇団ではないが、舞台に小説や映画では表現し得ない奥行きが感じられた。

そのハイバイを主宰する岩井秀人の初小説。再演を重ねている劇団代表作の小説化で、原作の面白さは折り紙付き。そこに小説ならではの面白さも加わった。

引きこもりとその家族。繊細で、卑屈で、臆病な自尊心を抱えた引きこもりの兄。優柔不断なのに自己正当化だけは欠かさない、大人になりきれていない母親。兄思いで母親に反発する妹。それぞれの内面描写やちょっとした仕草は、ユーモアがありつつ、ひりひりするほど痛々しく生々しい。

なぜ人は外に出なくてはいけないのか。

自室・居間・風呂トイレの三角形と、家・スーパー・駅前の三角形を行き来するだけの人生は何が違うのか。

コメントを残す