折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー

ケン・リュウ編「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」

今年は劉慈欣の「三体」が話題になったものの、中国のSFと言われて具体的な作品が思い浮かぶ人は多くないだろう。そもそも中国文学の邦訳は言語圏の大きさに比して極めて少ない。

本書は中国の作家のSFアンソロジー。7作家の短編13本とともに、SF論的なエッセイや各作家についての解説も収録されている。中国文学の今を伝えるとともに、SFというジャンルの幅と奥行きを示す充実した一冊となっている。

表題作は郝景芳のヒューゴー賞受賞作。階級ごとに都市構造が三つに分割され、時間帯によって地表に現れる層が移り変わっていくという北京が舞台。手紙を巡るドラマそのものはシンプルだが、折りたたまれる北京という光景だけでも魅力的で、ぜひCGを駆使して映画化してほしい。

劉慈欣の作品からは「三体」の一部を抜粋した「円」が収録されている。戦国時代の中国を舞台に、300万人の兵士をスイッチに見立てて擬似的なコンピューターを作り上げるという発想が秀逸。

同じ劉の「神様の介護係」も非常に面白い。人類の創造主というよぼよぼの老人20億人が宇宙から地球上に降り立つというユーモアと風刺にあふれた快作。

そのほか、遺伝子改造された鼠との戦いを描く陳楸帆の「鼠年」、伝奇ファンタジー的な夏笳の「百鬼夜行街」など。作品の背後に社会主義政府の抑圧の影を読み取ることもできるが、それだけではない豊かな作品群。

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