石井光太「遺体―震災、津波の果てに」
医師、消防団、民生委員、市職員…、釜石の安置所で遺体と関わった人々を追ったドキュメント。
「死者・行方不明者2万人」がどれほどのことなのか。
捜索も搬送も検案も火葬も間に合わない。土葬を認めるのか。身元が分からない遺体は。ここには書かれていないが、福島では遺体の放射能汚染の問題もあった。
夥しい数の死者の尊厳を保つため、皆がぎりぎりの中で仕事をしていた。震災の最前線の光景として多くの人に知ってもらいたい。
著者の小説的な文体は1人称のルポより、今回のような3人称の方がしっくりくる。吉村昭の記録小説と同じ、映像でも表現できない凄みがある。