崔実「ジニのパズル」
群像新人賞受賞作。変化球の多い新人賞作品の中では珍しいほどストレートな小説で、稀に見る傑作。
主人公は在日韓国人の少女ジニ。中学から朝鮮学校に通った彼女は日本語しか喋ることができず、クラスの中で浮いた存在になる。社会や大人に感じた疑問を自らの内に封じ込めることができない彼女に、歴史と政治が一人の人間として生きることを許さない。教室に飾られた金日成、金正日の写真を窓から投げ捨てるなど、そのことごとくに真正面からぶつかろうとするジニの姿勢は痛快で、同時にその深い孤独と押し殺した恐怖に胸を締め付けられる。政治的なテーマを扱いながらも、「ライ麦畑」の系譜につらなる真っ直ぐな青春小説に感じた。