現代語訳 完本 浄瑠璃物語

信多純一「現代語訳 完本 浄瑠璃物語」

牛若丸と浄瑠璃姫の悲恋物語。「浄瑠璃」という言葉は一般的だが、その語源である浄瑠璃物語はあまり知られていない。起伏のあるストーリーで、他の古典説話と比べてもなかなか面白い。

子に恵まれない夫婦が薬師如来に祈願し、すげなく無理と告げられると、この場で腹を切って呪って荒寺にしてやると仏を脅し、浄瑠璃姫を授かるという冒頭から古典らしい大胆な展開。

牛若が浄瑠璃姫を口説く場面も、屁理屈と雅趣のごった煮という感じで思わず苦笑い。

和泉式部の例(親の菩提のために千人の男と寝たというもの)などを引き合いに出し、最後は「清くとも一度はおちよ滝の水 にごりてのちはすまぬものかは」(濁っても再び澄むだろうから)。

後半、秀衡の娘と牛若が契ったという平家方の讒言を信じた姫が失意の中に自害する場面は切なく、墓前での歌のやりとりは涙を誘う。

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