著者の作品を一言で評するなら、なんてことないのになんだか面白い。登場人物は皆どこかずれているけど、そのずれは他人事とは思えないし、力の抜けた筆に不思議と引き込まれる。
この連作短編集は、撮影の合間に居酒屋で酒を飲むくらいが人生の喜びという、地味なバイプレイヤーが主人公。役者を主人公とした作品だけあって、さまざまな架空の映画のエピソードや脚本が盛り込まれているのだけど、それが、トランポリンのしすぎで胃下垂になってしまう夢見る少女の話「ロスト・イン・トランポリン」など、どれもテキトーな感じで面白い。
全体として滑稽でありながら、そこにしっかり人生の哀歓が描かれていて、読み終えて気持ちが軽くなる。