唐十郎の作品は10本くらい見ていて、小説(「佐川君からの手紙」)も読んでいるが、戯曲に触れるのは初めて。支離滅裂でかみ合わない会話の連続なのに、不思議と引き込まれてしまうのは台詞のテンポの良さと、その響きの小気味よさ。
表題作は1975年初演。ナイーブな青年アリダと、うさんくさい銀メガネ、心中を図って死んだ兄の恋人で生き残ったお甲。唐十郎の作品の中では、かなり物語の筋が見えやすい構成となっている一方で、うらぶれた長屋に、小人プロレスの一座など、奇妙で懐かしい世界は唐の真骨頂。
2013年の舞台(蜷川幸雄演出、大空祐飛、窪田正孝、平幹二朗ほか出演)では、平幹二朗が演じた銀メガネの存在感が印象に残っている。
併録の「由比正雪」は、唐十郎には珍しい(唯一の?)時代劇で、現実の由比正雪とは直接関係の無い滅茶苦茶な物語。「ガラスの少尉」も次から次へと場面が移り変わり、その展開について行けない。丁寧に読もうとしても、いつの間にか置いてけぼりに。きっと舞台で見たらもっと置いていかれてしまうだろう。でもそれが良い。