恐怖の哲学

戸田山和久「恐怖の哲学 ホラーで人間を読む」

恐怖とは何なのか、そして人はなぜ恐怖を楽しむ(ホラー映画、肝試し…etc)ことができるのか。著者は科学哲学の専門家。哲学や脳科学の先行論文を踏まえつつ、著者なりの視点を交えて分かりやすく人間の情動の謎に迫る。

人間の抱く“恐怖の感じ”は、動物のように身の危険を知らせるための単純な身体的反応というだけでは説明できない。人間の脳は進化の過程でさまざまなものを表象することを可能にし、目の前にないものでも恐怖することを可能にした。恐怖そのものにはアドレナリンが分泌されるなど快楽の要素があり、目の前のものを虚構と判断する高次の意識と組み合わされば倒錯的な娯楽として成立する。

意識や情動についての研究の入門書としてよくまとまっており、なぜ人は感情や意識を持つのか、そもそも感情ってなんだ? に対する一つの答えになっている。人間のユニークさがよく分かる一冊。

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