目の見えない人は世界をどう見ているのか

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」

“見る”ということから考える身体論。

全盲という状態を、見えている状態を基準に「視覚情報の欠如」として捉えるのではなく、「視覚抜きで成立している身体」として考える。情報が少ないぶん自由であるという視点は目からうろこ。

晴眼者は富士山と聞いて上部の欠けた三角形を思い浮かべるが、盲者は円錐をイメージするという。目が見える人は想像の世界でも特定の視点に縛られ、二次元のイメージに落とし込んで思い浮かべてしまう。先天的に見えなければ、三次元のまま俯瞰的に事物をイメージし、表も裏も無く全てを等価に捉えることができる。

見えていても見間違えはあり、視覚は絶対ではない。複数人で観察したこと、感じたことを次々と言っていく(解説ではなく、経験を共有する)ソーシャルビューで目が見えない人も絵画を鑑賞することができるというのも面白い。美術の鑑賞が、作品についての情報を得るのではなく、気づきや感動を得るのが目的なら、目が見える必要は確かにない。

個人的に、病気で右目が見えづらくなってから視覚について思うことが増えたが、いろいろと考えるヒントをくれた一冊。

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