中沢新一「森のバロック」
世界を放浪後、紀州の森に分け入り、粘菌と民俗学の研究を通じて独自の思想を広げていった南方熊楠。その断片を現代から読み解く。
レヴィ=ストロースのような神話分析や、エコロジーの先駆けとも言える主張、華厳思想を深化させたマンダラとして世界をとらえる視点など、熊楠の思想か中沢新一の思想かはっきりしないところもあるけど、刺激的。民俗と自然を徹底的に見つめることが、これほど普遍的な思想を生む。
中沢新一らしい、カントから量子論まで自由に引用して流れるような筆致も見事。
読んだ本の記録。