宮本常一、山本周五郎、揖西高速、山代巴「日本残酷物語1 貧しき人々のむれ」
「残酷物語」という言葉から特異なケースを取り上げた記録集と勘違いさせかねないが、内容はまっとうな民衆史。
飢えや病が避けられぬものだった時代。人が生きていくため、どんな歴史を刻まなければならなかったのか。
「お祖父さまがおなくなりになった由聞いてまいりました。片ももなりともおわけくだされまいか。わたしのところの祖父さまも、二三日の内には片がつくだろうと存じます。その際はすぐにお返しに上がります」と尋ねる老婆。
間引き、棄老、掠奪、虐待、人肉食…それは確かに現代の感覚では残酷と表現するしかないのかもしれない。
一方で、冷害に強い稲を開発し、病を克服していく人の強さ。
過去が現在より牧歌的で美しい世界だったなんてことは絶対にない。