ロメオ・ダレール「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか ―PKO司令官の手記」
原題は「Shake Hands with the Devil」。この本をもとにした同名ドキュメンタリーを見たことがあるが、まさか邦訳されるとは。
94年、国民の1割に当たる約80万人がたった100日の間に虐殺されたルワンダ。悲劇の記録は邦訳も含めて多く出ているが、背景を丁寧に分析した本は少ない。これは、当時、目の前で始まった虐殺を傍観するしかなかった国連平和維持軍の司令官による手記。徐々に緊張感が高まる中、国連と国際社会がいかにルワンダを無視したのかの貴重な証言となっている。
「私たちは同じ人間なのだろうか? あるいは人間としての価値には違いがあるのだろうか?」
ダレールの叫びは、ルワンダの「価値」を最後までリスクと天秤にかけ続けた国際社会と、人間の想像力の不公平さに対する告発でもある。私たちは、アフリカで起こったことを(あるいは同じ国内でも、今、東北の被災地に暮らす一人一人を)現実のものとして想像力の対象にできているだろうか。この想像力の貧困を乗り越えることが出来なければ、メディアの発達には何の価値もない。