師父の遺言

松井今朝子「師父の遺言」

直木賞作家である著者の自伝だが、その多くを戦後文化の巨人(怪人?)、武智鉄二とのエピソードが占めており、一種の評伝ともなっている。あくまで思い出としての書き方で少し物足りない部分もあるけど、活動、発言の振幅が広く、なかなか実像がつかめない武智鉄二という人物の情熱、器の大きさ、そして何より人間らしい側面を最後の弟子という立場から綴っていて胸を打つ。“兄弟子”である扇雀(坂田藤十郎)とのやりとりも印象的。

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