柴崎友香「その街の今は」
何気ない日常を描くという、よくある感じの小説だが、大阪の街に対する愛情に富んでいて読んでいて温かい気持ちになる。それもありがちなデフォルメされた“大阪らしい大阪”ではなく、日本中共通するような都市の情景に、そこで生まれ育ったという愛着を滲ませる。
何気ない街並みの描写でも、大阪で育ったり、そこで暮らしている身にとってはその情景がはっきり浮かぶ。主人公の女性は、昔の街並みの写真に惹かれ収集しているが、この小説も将来の読者に同じ感興をわかせるのでは。
読んだ本の記録。