禅銃(ゼン・ガン)

バリントン・J・ベイリー「禅銃(ゼン・ガン)」

「カエアンの聖衣」が非常に面白かったので、同じくコアなファンの多い「禅銃」も。

反乱で崩壊に危機に瀕した帝国、他の宇宙からの干渉、究極の戦士「小姓」、小さくも強力な兵器「禅銃」――など、SFやファンタジー好きの心をくすぐる設定盛りだくさん。

「後退理論」という独自の物理学理論が物語の根幹をなす。引力は存在せず、粒子間の斥力が宇宙を構成しているという理論で、全くのデタラメだが、物理学の知識が乏しい身には、なるほどそうかもしれない、と思わせる勢いがある。斥力が宇宙を構成するという理論が、動静一如という禅の公案につながるあたりがデタラメの真骨頂。

デタラメの強固な地盤の上に、奔放な物語が展開する。物語としてはやや散漫(「カエアンの聖衣」の方が完成度は高い)とはいえ、ホラ話のスケールに圧倒される。

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