小島剛一「トルコのもう一つの顔・補遺編」
名著「トルコのもう一つの顔」(中公新書)の補遺編。
トルコは長く国内の少数民族の存在を認めず、言語などで極端な同化政策をとってきた。言語学者の著者は、国外追放の目に遭うなどしながら、粘り強くトルコ国内の少数民族言語の調査・記録を続け、91年刊の同書はトルコ政府の少数民族迫害の実態を日本国内に示す画期的な書となった。
25年の時を経て世に出されたこの補遺編は、新書で当時編集者に削られたり、書き直したりした部分を抜粋して草稿と並べたもの。トルコ政府に対する激しい怒りが全編に満ちている。過激な物言いは説得力を失わせるという点で、中公新書版は冷静な告発の書として過不足無い内容になっていたと思うが、著者の怒りがこうして日の目を見て記録に残る意味も大きい。
編集者の仕事ぶりがよく分かる本でもあり、トルコや少数民族の問題に関心のない人でも興味深く読めるかもしれない。