日本文化の形成

宮本常一「日本文化の形成」

日本をくまなく歩いた民俗学者・宮本常一の遺稿。日本の“文化”はどこから来たのか。海を渡ってきた人たちが何を、どうもたらしたのか。

土間ではなく床に暮らす生活スタイルが海洋民の文化に由来するなど、人々の暮らしに密着してきた人間にしかできない着想が多い。未完ゆえの完成度の低さが惜しまれる。

アフリカを食べる

松本仁一「アフリカを食べる」

「カラシニコフ」の著者の特派員時代をつづったエッセイ。山羊の骨髄、牛の生き血、インパラの刺し身……、軽い文章でアフリカの食文化が描かれているが、同時に紛争や貧困の現実も痛い程伝わる。

食をテーマとしたルポは辺見庸の「もの食う人々」が有名だが、辺見の文章はやや大仰で、時折傲慢さも感じられる。著者の年齢も連載・刊行時期もほぼ同じだが、辺見より視線が現地に近い。軽妙だが、敬意に満ちている。

新 忘れられた日本人

佐野眞一「新 忘れられた日本人」

伝説的な地上げ屋、蒟蒻ジャーナリスト、スケベ椅子の開発者……一時代を築きながら、歴史から忘れられつつある人たちを取り上げた短篇評伝集。

タイトルは宮本常一の名著「忘れられた日本人」から。少々大それたタイトルをつけた感があるが、面白い。

飢餓同盟

安部公房「飢餓同盟」

寂れた田舎町で、中身の無い空虚な革命を目指した男は次第に狂っていく。1954年刊の安部公房の初期作品。左翼でありながら、左翼に対する冷めた見方も持つ安部公房の立場がうかがえる。