アヘン王国潜入記

高野秀行「アヘン王国潜入記」

当時世界最大の阿片産地だったゴールデントライアングルの農村で、芥子を栽培しながら7カ月過ごした破格の記録。

村に溶け込み、しかもアヘン中毒の“駄目な村人”に。

ビルマの少数民族についての貴重な報告でもある。ジャーナリスト的な思考に染まった人間にはこういうものは書けない。

高丘親王航海記

澁澤龍彦「高丘親王航海記」

幼い日の憧れから天竺を目指す御子。夢と現が溶け合ったような、突拍子もない、だけど不思議な魅力に溢れた旅物語。

さらりとした文章なのに、どうしてこんな雰囲気を出せるのだろう。ファンタジーの一つの完成形。

苦海浄土

石牟礼道子「苦海浄土」

読み終え、言葉が出ない。水俣の話だが、ルポでも聞書きでもない。ジャーナリズムでは絶対に出来ない記録と鎮魂と告発の仕方。

苦海そのものに生きる人々の語りは、逆説的に人間讃歌ですらある。

「宮本常一」 ちくま日本文学22

「宮本常一」 ちくま日本文学22

未読の文章が何編か収録されていたので購入。夭逝した子について書いた「萩の花」が印象的。

“人は暗さの中にジッとしていられるものではない。暗い中に火をともそうとするものである。私はわが子が小さいながらもその火をともすものであってもらいたいと思った”
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日輪の翼

中上健次「日輪の翼」

久しぶりに読み返した。中上作品の頂点は「枯木灘」、「千年の愉楽」、「奇蹟」あたりだと思うが、この作品がなぜか強く心に残っている。

トレーラーで旅する7人のオバの物語。全体にも細部にも難があるけど、有無を言わせない説得力がある。

“おうよ、わしら、クズじゃだ。チリ、アクタじゃだ”

百年の孤独

ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」

要約が不可能なほど、豊かで圧倒的な密度の物語。本当に力を持った物語に触れると、感想は出てこない。