斎藤美奈子「冠婚葬祭のひみつ」
冠婚葬祭が現在の形になった歴史を取り上げた第1章が面白い。いかにも伝統っぽい神前式も、大正天皇の御婚儀を経て神社が結婚ビジネスに参入したことに始まる。葬儀も現在の告別式のルーツは中江兆民。どちらもせいぜい100年の歴史しかない。
桃と端午の節句が下火になる一方、宮参り、お食い初め、一升餅などのイベントの実施率は最近の方が高いというのも面白い。住宅事情や経済状況で、行いやすいイベントへと「伝統行事」は移っていく。
仏教と葬式のつながりが江戸時代の寺請制度以降というのも興味深い。火葬が普及する以前、日本では土葬や曝葬が主で、遺骨や墓に執着しない文化だった。守るべき「代々墓」は火葬と明治民法下の家制度が結びついて生まれた。
第2、3章はリクルートの統計やマニュアル本を引っ張って現在の結婚式や葬儀をちゃかすだけになっていて、この著者らしい内容だが、いまいち。