塩田武士「罪の声」
昭和史の謎の一つ、グリコ・森永事件を題材に、犯人グループの子供たちのその後と、未解決事件を追う新聞記者の話が交互に綴られていく。
一連の脅迫事件では子供の声を録音したテープが使われた。ある日、一人の青年が自宅でそのテープを見つけ、声の主が幼い頃の自分だと気づく。
実際の事件の経過などを忠実になぞりつつ、仕手筋やヤクザの思惑が交錯した犯人グループの姿を丁寧に描いており、フィクションなのに、かなりの説得力のある仮説にもなっている。今年No.1ミステリーとの声も大げさではない傑作。