米本和広「新装版 洗脳の楽園」
「無所有一体」を掲げ、我執=自我を捨てた“ユートピア”ヤマギシ会。解離状態に陥らせる「特講」、徐々に生まれる上下関係や命令の形をとらない強制力など、二十世紀、世界各地で悲劇を招いた社会主義の実験を彷彿とさせる。
ヤマギシズムが体系ではなくイメージにすぎないこと、農業組合法人として給金の支払いを偽装した金の流れなども興味深い。
何より、大人の夢に巻き込まれた子の人権について考えさせられる。子は親を、そして教育者を選べない。だからこそ、教育や子育てを語るとき、「べき論」で一片のためらいも見せない人は信用出来ない。