痴呆を生きるということ

小澤勲「痴呆を生きるということ」

痴呆について語られることは多いが、痴呆を病む人たちが何を見て、どう感じ、どのような世界に生きているかが語られることはほとんど無い。

記憶障害などの避けられない中核症状と、妄想や徘徊など、環境や個人によっても左右される周辺症状。認知レベルの障害が進んでも、「わたし」の情動性は保たれ、それが痴呆の当事者を瀬戸際に追い込んでいく。

一方、信頼で結ばれた援助者や環境が「認知の補装具」を提供できれば、多くの不自由は乗り越えられる。当事者の心に寄り添おうとする著者の視線はとてもやさしい。

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