円城塔「これはペンです」
叔父は文字だ。文字通り―。妙な手紙を送ってくる叔父。これは小説と言えるのか、と思いつつ最後まで読むと確かに小説だった。
“わたしたちはあまりにも簡単に出鱈目を書けてしまうと思わないかね”
ソーカル「知の欺瞞」の純文学版と言えるかもしれないが、文学は本来それをも拾い上げるだけの懐を持つはずで、純文学らしくないとの理由で芥川賞を外したのは賞の価値を落としたと思う。単に面白くないとの選評は分からないでもない。
併録の「良い夜を持っている」はイメージの構築力に脱帽。この人が書く本格的な物語が読んでみたい。