食肉の帝王

溝口敦「食肉の帝王 同和と暴力で巨富を掴んだ男」

補助金詐欺事件が明るみに出るまでメディアでもほとんど取り上げられることのなかった食肉業界のドン、浅田満。政・官・行・暴・同和に独自のネットワークを築き、アンタッチャブルな存在として肥え太っていく。

前半は一種の立志伝としても面白い(浅田は決して悪人としてだけ描かれているわけではなく、著者は利権あさりを許した同和行政こそ罪深いと指摘している)が、後半は様々な疑惑や金満家ぶりを書き連ねている部分が多く、ここは一通り裁判も終わった今になって読むとあまり面白くない。過去の事件のソースは、部落解放同盟と対立していた共産党系の赤旗がほとんどで、一般メディアが軒並みこの問題を避けていたのが伝わってくる。

著者自身が「差別を許してはならないし、同時にタブーを復活させてはならない」と書いているように、まさに雑誌ジャーナリズムの神髄と言うべきルポ。

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