高野秀行「アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン」
ベトナムの「フイハイ」、奄美大島の「ケンモン」、アフガニスタンの「ペシャクパラング」。
ミャンマーやソマリアのルポで高い評価を受ける著者だが、大学時代のデビュー作「幻獣ムベンベを追え」から一貫して未確認動物=UMAの探求にも力を入れていて、トルコ・ワン湖周辺を舞台とした「怪獣記」など、一連の著作はいずれも面白い。
結論が「見つかった」ではないということは読む前から分かっている。それでも著者のルポに引き込まれるのは、土地の人々の話を聞いて回ったその記録が、まさに旅の魅力に富んでいるからだろう。精霊のような存在であるフイハイから、妖怪的なケンモンまで、未確認動物の目撃談は、社会のあり方や土地の歴史、民間信仰などさまざまな情報を含んでいる。
未確認動物の情報を紹介しただけではオカルト本の域を出ないが、大まじめにその目撃情報を自らの足で聞いて回ると、表層だけの旅行者には見えてこない土地の姿が立ち現れる。