長い。長いが有無を言わせない勢いがあり、読み進める手が止まらなかった。作中にも登場するアーヴィングの小説を、ポップで軽やかにした感じ。
1977年に父の赴任先のイランで生まれた「僕」の物語。舞台はイランから大阪、そしてエジプト、再び日本へ。ある手紙をきっかけに両親が離婚し、家族はばらばらになっていく。エキセントリックで不安定な姉を鬱陶しく思っていた「僕」は、30代になって立場が逆転していることに気付く。
家族との、そして自分自身との和解のドラマ。エジプト時代の親友ヤコブとの友情が美しい。タイトルの「サラバ」は、アラビア語の「マッサラーマ」と日本語の「さらば」を掛け合わせた二人の合言葉。
「僕」の半生は著者自身の経歴と重なるが、もちろん自伝小説ではない。ただ、これを書くために作家になったという熱を感じさせる作品であり、その意味で、自分の人生を紹介するだけの文章よりも余程自伝的と言える小説かもしれない。