岡林、信康を語る

岡林信康「岡林、信康を語る」

フォークからロック、演歌、“エンヤトット”と、ジャンルを超えて歩んできた歌手、岡林信康の半生の聞き書き。聞き手・構成はディスクユニオンの矢島礁平氏。

「フォークの神様」と呼ばれ、それに反発するように生きてきたその半生は既に多くの場所で語られてきたが、本書では幼少期の体験から、フォークとの出会い、田舎暮らしや美空ひばりとのエピソードまで丁寧に振り返っており、折々の音楽がどのように生まれてきたかがよく分かる。

特に興味深かったのが、曲作りへの賛美歌の影響と、少年時代から続くハト飼育への情熱。父親が牧師で、本人も大学の神学部中退という経歴はよく知られているが、改めて聴くと「山谷ブルース」「友よ」といった初期のフォークから、民謡のリズムにのせた新ジャンル“エンヤトット”まで、賛美歌と日本の土着の音楽の融合が根底にあることが分かる。ハトについては、ハトレースという奥深い世界があるのは知っていたけど、「フォークの神様」がフォークに出会う以前の幼い頃から情熱を注いでいたという意外性に驚いた。

「今になってわかったことは、俺が追いかけてたのはディランじゃなくて賛美歌だったっていうこと」

「俺は野次馬として、岡林信康の人生を楽しませてもらっているということかな。それをやらせているのは、見えない力なんだ。俺は岡林信康というドラマの観客なんだ。自分の判断や自分の能力だけでやったことっていうのは、結局その人の能力レベルのことしか起こらないよ」

コメントを残す