2021年に読んだ本は167冊(前年比↑47)、4万6892ページ(同↑1万159)。
一番面白かったのは「三体」三部作として、それを除いて、小説の新刊から個人的な好みを加味してベスト5を選ぶと、村田喜代子「姉の島」、リービ英雄「天路」、藤沢周「世阿弥最後の花」、川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」、宮内勝典「二千億の果実」。
続いて、金原ひとみ「アンソーシャル ディスタンス」と、平野啓一郎「本心」。この2冊は、客観的にも2021年を代表する2冊と言っても良いのでは。それぞれの作家としての代表作にも数えられるだろう。
ほかに心に残ったもの、面白かったものは、佐伯一麦「アスベストス」、松家仁之「泡」、金子薫「道化むさぼる揚羽の夢の」、長嶋有「ルーティーンズ」、阿部和重「ブラック・チェンバー・ミュージック」。
中島京子「やさしい猫」は、一人でも多くの人に読んでもらいたい作品。入管の問題を扱った家族小説・恋愛小説だが、この問題で侵害されているのは「外国人の権利」だけではなく、日本人も含む全ての人の「誰かを愛する権利」だということが浮かび上がる。
いとうせいこう「福島モノローグ」、佐藤厚志「象の皮膚」、石沢麻依「貝に続く場所にて」、くどうれいん「氷柱の声」など、震災と原発事故を扱った作品にも良いものが多かった。現実を単純化したり戯画化したりするのではなく、小さな声を丁寧に描く作品が増えてきた印象。10年の時間を経て、やっとフィクションで落ち着いて扱うことができるようになったのかもしれない。
滝口悠生「長い一日」、町屋良平「ほんのこども」は日本語の散文の可能性を広げる作品。イッセー尾形「シェークスピア・カバーズ」は、著者の多才さに舌を巻いた。
新刊以外では、多和田葉子「星に仄めかされて」、柳美里「JR上野駅公園口」、山田詠美「風味絶佳」、黒井千次「群棲」、高原英理「観念結晶大系」、村上政彦「台湾聖母」など。あと、小説ではないけど、リービ英雄「我的日本語」、多和田葉子「エクソフォニー」。どちらも「日本語文学」を考える上での必読書。
フィクション以外では、まず、ルトガー・ブレグマン「Humankind 希望の歴史」。人がいかに信じるに足る種か。人間観、歴史観を揺さぶる一冊。
山舩晃太郎「沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う」を読むと、水中考古学に興味を持つこと間違いなし。高橋久美子「その農地、私が買います」は、軽快な筆致で現代日本のさまざまな課題を浮き彫りにする。
塩見三省「歌うように伝えたい」、岡林信康「岡林、信康を語る」、荻田泰永「考える脚」。本の内容も著者の立場も全く異なるけど、読み終えて、それぞれの著者のファンになった。