三宅周太郎「続・文楽の研究」
昭和初期に書かれた評論と随筆集。豊竹山城少掾、吉田栄三ら名人の逸話や、文楽の危機について。
著者は後継者難から文楽の未来を悲観しつつ、歌舞伎などに比べて往時の形態、技芸を忠実に現在に伝えているとその価値を高く評価している。当時既に衰退著しかった淡路人形浄瑠璃についての記述もあり、芸が変わらずに受け継がれてくることの難しさを思わされる。
著者は文楽がやっと文化財と認識されるようになってきたと喜んでいるが、それから半世紀以上が経った今、地元の大阪でその認識が消えたような議論がなされているのは悲しい。芸能が変わらず現代に残っていること、それは多くの有形文化財と同様、いやそれ以上に奇跡のようなことなのに。