アーサー・ミラー「セールスマンの死」
働いて、働いて、その先に何があるのか。子への過度な期待は行き場を無くし、職とともに自らのアイデンティティも失われる。夢の終わりを受け止められず、人生が空虚であると認めたくない故に追い込まれてゆく老セールスマン。
これが60年以上前の作品ということに驚く。書かれた時点よりも、世界の変化とともに普遍性を増してきたと思える作品。一方で、これが過去の社会を描いたものと捉えられるような世界になってほしいとも思う。
読んだ本の記録。
高山文彦「火花 北条民雄の生涯」
「何もかも奪われてしまって、ただ一つ、生命だけが取り残された」と「いのちの初夜」で書いた北條民雄。
「社会的人間として亡びるだけではありません。そんな浅はかな亡び方では決してないのです」
癩を病み、23歳の若さで夭逝するまで生きることの恐ろしさを極限化した生を見つめ続けた。その作品は究極の所で、生を肯定する叫びとなった。
“火花 北条民雄の生涯” の続きを読む
高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」
圧巻。事実上の独立国家ソマリランド、海賊国家プントランド、そして無政府地帯。不可能と思えるような地域を旅してエンターテイメントに仕立てあげながら、氏族の構造や政治体制、歴史にまで踏み込んでいて、著者の取材力に脱帽。現在の“ソマリア”に関するほぼ唯一の日本語文献として、資料的な価値も高い。
“謎の独立国家ソマリランド” の続きを読む