市川團十郎「團十郎の歌舞伎案内」
前半は初代からの團十郎の歴史、後半は芸能としての歌舞伎の概説。十二代目團十郎自身の歌舞伎観や先代との思い出も語られていて、単なる入門書にはとどまらない内容。歌舞伎と、能や人形浄瑠璃など歌舞伎へと続く芸能に対する深い敬意が感じられる。
團十郎こそが歌舞伎の歴史であるという自負と謙虚さを兼ね備えた生き方。掛詞をいかに現代に通じるものにするかなどの問題意識も綴られている。
読んだ本の記録。
「ニール・ヤング自伝」
ニール・ヤング初の自伝。自伝とはいうものの、全然時系列になっていない、とりとめのない文章がこの人らしい。音楽活動の思い出を軸としつつ、音質へのこだわりや、趣味の車、鉄道模型などなど、思いつくまま書き連ねていったかのよう。
「お察しの通り、わたしは自分の思考をほとんどコントロールできない。今までのところ、書き直しをしたのはほんの1パラグラフほどだ」
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竹本住太夫「文楽のこころを語る」
浄瑠璃の主な演目について、語り手としての思いや工夫を聞き書きでまとめた一冊。ただ抑揚をつけて読み上げているのではなく、いかに心を、情を伝えるのか。そこに気の遠くなるような稽古と試行錯誤がある。
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有吉佐和子「一の糸」
芸道一筋に生きた文楽三味線弾きの露沢徳兵衛と、その後添えとして生涯をささげた酒屋の箱入り娘の茜の一生を、敗戦、文楽会の分裂、鶴澤清六と山城少掾の決別など、現実の出来事をモデルに交え描いた長篇小説。
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石牟礼道子「椿の海の記」
「苦海浄土」以前の水俣、物心つくかつかないかの頃を描いた自伝的小説。
「この世の成り立ちを紡いでいるものの気配を、春になるといつもわたしは感じていた」
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