安部公房「方舟さくら丸」
久しぶりに再読。
採石場跡に築いた巨大な地下シェルターで引きこもりのように暮らし、その“方舟”で滅亡後の世界を生き延びる仲間を探す男。わずかに湿り気のあるような、不快さを帯びた文章。人間の残忍さ、薄情さ、不安定さ、論理的であることの醜悪さ、現世の気持ち悪さを偽悪的にならずに書き得た希有な作家だったと改めて感じる。
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読んだ本の記録。
安部公房「方舟さくら丸」
久しぶりに再読。
採石場跡に築いた巨大な地下シェルターで引きこもりのように暮らし、その“方舟”で滅亡後の世界を生き延びる仲間を探す男。わずかに湿り気のあるような、不快さを帯びた文章。人間の残忍さ、薄情さ、不安定さ、論理的であることの醜悪さ、現世の気持ち悪さを偽悪的にならずに書き得た希有な作家だったと改めて感じる。
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喜志哲雄「喜劇の手法 笑いのしくみを探る」
「喜劇」は笑いを追求する他の芸能とは違う仕組みを持っている。考察は少なく、あらすじと構造の紹介が続いて読み物としてはちょっとしんどいが、名作と呼ばれる作品がいかに巧みに構築されているかが分かる。
観客が作品内の情報を、どの段階で、どの程度掴むのか。劇と観客の距離によって、同じ出来事が喜劇にも悲劇にも映る。
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宮本常一「家郷の訓」
宮本常一の代表作の一つ。地域社会で子供がどう育てられたのか、故郷・周防大島での、幼少期の自らの経験をもとに綴った克明な生活誌。一種の自伝ともいえ、ただ静的で、因習にとらわれているだけではなかった村の生活が鮮やかに記されている。
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平田オリザ「演劇入門」
平田オリザによる戯曲の書き方を通じた演劇論。
「伝えたいことなど何もない。でも表現したいことは山ほどある」という表明はポストモダンの芸術全般に通じる。
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網野善彦「宮本常一『忘れられた日本人』を読む」
文字資料に頼る歴史は、時代を経るごとに社会の多様さを見落としていく。
百姓、女性、老人、子供、遍歴民……日本列島の無文字社会を蘇らせる試みを続けた宮本常一。中世史家の網野善彦がその代表作を読み解く。
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伊藤計劃「The Indifference Engine」
伊藤計劃の遺したわずかな短篇を集めたもの。どの作品も、生きて、長篇として徹底的に書き込んでほしかった。
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別役実「壊れた風景/象」
別役実の代表作のひとつ「象」。病床で原爆症に苦しみつつも、背中に残るケロイドを人々に見せびらかすことを夢見る男。原爆の悲惨さを扱った作品である以上に、圧倒的な暴力の被害を受けた時、人がどこにアイデンティティを求めて生きていくかの問題を浮き彫りにしている。
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