アーシュラ・K・ル=グウィン「ギフト 西のはての年代記I」
「西のはての年代記」第1作。“ギフト”と呼ばれる不思議な力を持った人々が暮らす高地。制御できない<もどし>のギフトを持つため、父に両目を封印された少年。
父と子、少年の成長と、よくあるテーマだけど、精緻な世界観に引き込まれる。ファンタジーものの王道ながら、想像力を刺激する広がりのあるラストも素晴らしい。
読んだ本の記録。
佐伯真一「戦場の精神史 武士道という幻影」
多くの軍記物に記されつつも、あまり注目されない騙し討ちの場面。戦場で生まれた「武士道」は本来、虚偽・謀略を働いてでも、勝つこと、功名を立てることが第一であった。
合戦が遠い存在となった近世の太平の世で、当時は異端とも言える「葉隠」が生まれ、明治には新渡戸稲造の「武士道」が広く読まれるようになる。
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菊池俊彦「オホーツクの古代史」
オホーツクの歴史と言われ、何か具体的なイメージが湧く人が、日本にどれだけいるだろうか。
古代中国の文献に登場し、サハリンかカムチャッカにあったとみられる流鬼国と夜叉国。著者は僅かに残された文献上の記録と発掘調査の結果から、サハリン=流鬼、コリャーク=夜叉と推定する。
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長谷川亮一「地図から消えた島々 幻の日本領と南洋探検家たち」
明治末期に発見され、領有宣言までされた中ノ鳥島。1972年まで海図に残り続けたロス・ジャルディン諸島。アホウドリの捕獲や鉱物資源のために南進した商人たちと帝国主義が生み出した幻の島々。
実在しなかった島々を軸に、小笠原や大東諸島などがどのように日本領に編入されてきたのかも触れつつ、日本の大航海時代を描く一冊。
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中野純「庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか」
三途の川にいるという奪衣婆。ほとんど忘れられたような存在だけど、よく見ると閻魔像とセットであちこちに残っている。
各地の寺や道端に残る十王堂など、“地獄”を巡る旅。
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内田樹「街場の文体論」
久しぶりに著者の本を手にとった。コミュニケーション論の総括的な内容で、バルトやソシュールに触れつつ、後半はこれまで繰り返し語ってきた内容に着地。メタ・メッセージの重要性。
ほかにも、丸山真男が海外でも度々参照されるのに吉本隆明がほとんど翻訳されない理由や、司馬遼太郎の内向きさなど、結構示唆に富んでて面白い。
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辺見じゅん「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」
敗戦後、約60万の日本人がソ連各地に抑留され、再び故国の地を踏めなかった者も多い。
収容所で過酷な労働を強いられながら、俳句を詠むことで生きる希望と故郷への思いを忘れなかった人たちがいた。その「アムール句会」の中心となった男の遺書は、仲間たちが記憶して持ち帰り、敗戦から12年目に家族のもとへ届けられた。
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