掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

「掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集」

2004年の死後、再評価が進む米国の作家。初の邦訳短編集。

レイモンド・カーヴァーをより泥臭く、スレたようにした印象。一方に想像力の極北というようなスケールの大きな物語があり、一方にこうしたミニマルで、個々の人生、日々の生活から生まれたような作品があるのが米文学の面白さ。

著者は酒浸りの母との関係に悩みながら、自らもアルコール依存症に苦しんだ。薬物依存症の夫らと3度の離婚を経て4人の子供たちを育てながら、さまざまな職業を転々とし、執筆活動を続けた。

ほぼ全て自身の体験に基づいて書いているのに、別々の物語を描いた純然たるフィクションのように感じられるのは、著者の人生が起伏に富んだものであったからだろう。同時に、断片の一つ一つにひどくリアルな手触りがある。こうした悩み、悲しみ、苦しみ、苛立ち、諦念を抱えて生きている人は社会のあちこちにいるはずだ。

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