あとかた

千早茜「あとかた」

デビュー作の「魚神」とはだいぶ違う雰囲気の連作短編。空虚な日常、日々の倦怠感、あるいはそこに端を発する不倫、のような話は既視感があるし、こういう表現はあまり使いたくないが、最初はかなり女性的な小説に感じた。ただ、読み進めるうちに不思議と引き込まれて、もっと先を読んでみたいと思ったし、読み終えて不思議と心に残った。現実感と非現実感の間をたゆたうような筆致、各短編の重なり具合なども巧みな印象。

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