中山太郎「売笑三千年史」
神代から明治まで、売笑の歴史を総覧する大著。
膨大な史料を引用し、宗教的行為としての売色から始まり、巫女から巫娼へ、そして遊行婦、浮かれ女、白拍子、娼妓、芸妓……とその変遷を辿っていく。ただの性産業の歴史ではなく、婚姻形態の移り変わりや、武士の台頭など社会の変化を映し出していて興味深い。
男色の存在も切り離せず、江戸期の陰間茶屋や衆道は有名だが、それ以前からの根強い歴史に驚かされる。
昭和2年の刊行だけあって随所に差別的な描写が目立つが、得難い一冊。これを復刊したちくま学芸文庫に賞賛を贈りたい。