ボブ・ディラン自伝

「ボブ・ディラン自伝」

自伝といっても、ぱっと読んだだけではいつのことか分からない部分も多く、決して親切とは言えない内容がこの人らしい。

代弁者と言われることへのいらだち、隠遁生活から「新しい夜明け」への第3章、ダニエル・ラノワとの「オー・マシー」を振り返った第4章などが具体的に語られている一方で、エレクトリックへの転向など、外から見た転機についてはほとんど触れていない。

ごく初期の頃を書いた文章で「ほかのパフォーマーたちの多くは、歌ではなく自分自身を伝えようとしていた。わたしの場合は歌を伝えることがたいせつだった」という言葉が印象的。

ウディ・ガスリー、ロバート・ジョンソンなど、影響を受けたものについて次々と綴っているのも興味深い。

煙に巻かれたような読後感も含めて、ボブ・ディランがどういう人物か、これほど分かる本もない。

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