すみれ

青山七恵「すみれ」

37歳のレミちゃんと語り手である15歳の少女。「当たり前の幸せなんか、いやだ……」と感じつつ、自分の平凡さに気付いている思春期の少女の苦しみに切実さがある一方で、心を病んでいるというレミちゃんを含む周りの人物の造形にちょっと違和感も。

レミちゃんはいわゆる困ったちゃんだし、両親も変。ただ、レミちゃんを救わなかったと自責しながら成長し、小説家になった少女が「今まで自分が手を放してしまっただれかが、別のだれかにきっと救われるんだって、ほとんど祈るみたいに、無理矢理そう信じて、書いてるの」と語る場面など、著者自身の言葉や創作に対する思いが滲んでいる部分が随所にあり、心に残った。

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