栗山民也「演出家の仕事」
演出入門と言うよりは、栗山民也が自らの演出手法を通じて、演劇観、さらには世界をどう見るかという哲学を語ったもの。とにかく「聞く」(=見る=読む)と言うことを大切にしている。誰かの話す小さな声、世界の微かな変化。それらを拾い上げることから何かが生まれる。栗山民也は自分らしさや独自性なんて一切気にしない。“自分の中にある何か”を外に発する事ばかりが芸術ではないということが分かる。ただ巻末に収録されている「『ロマンス』演出日記」を読むと、原稿が遅い井上ひさしのもとで働くことが多かったから、そうした姿勢が身についたという気がしなくもない。