エリック・ワイナー「世界しあわせ紀行」
幸福の探求は不幸の主たる原因の一つ。それを承知で著者は“幸せな土地”を求める旅に出る。
GNHを掲げるブータン、税金の無いカタール、極寒のアイスランド、マイペンライのタイ、インドのアシュラム……
幸せな人と不幸な人を分ける境はどこにあるのだろう。そしてそれに社会制度や文化、風土が影響を与えるのだろうか。そもそも幸福こそが最も価値あるものなのか。
旅行記の体裁をとりながら、社会学や心理学、哲学の知見、格言が次から次へと盛り込まれ、常に一言多いシニカルでとぼけた文章が面白い。
長い回り道だらけの旅の足跡は、結果として、どこに幸せがあるのか、幸せとは何かの地図になっている。最後の、幸福とは名詞や動詞ではなく接続詞、というのはなかなか至言。