村田喜代子「龍秘御天歌」
慶長の役で朝鮮から日本に渡った陶工一族の物語。
日本で苗字帯刀を許されるほど重用され、偉大な職人としての地位を築いた長の死に、村を挙げての盛大な葬儀の準備が進む。その日本式の弔いに対し、百婆と呼ばれる妻はクニの弔いにこだわる。これからも日本で生きていかないといけない長の弟と息子たちは、百婆と住職や町役との間で複雑な立場に追い込まれる。
火葬か土葬か、読経か哭踊か。
喜劇のようなタッチで描かれながら、弔いは誰のためにあるのか、文化の違いをどう乗り越えるか、いろいろなことを考えさせられる作品。