銀河鉄道の父

門井慶喜「銀河鉄道の父」

宮沢賢治の父、政次郎の物語。“親バカ”であることが難しかった時代、厳格な父(賢治の祖父)、喜助から「父でありすぎる」と言われてしまう政次郎の目を通じて、賢治と宮沢家の姿が描かれる。第158回(2017年下期)直木賞受賞作。

賢治は質屋の長男として生まれ育ったが、家業を嫌い、「質屋に学問は不要」という祖父に反対されつつ、政次郎の許しで進学。学問や宗教に傾倒し、地に足のついた生活に憧れながらも、長いモラトリアムのような生涯を送った。

そんな息子に、はらはらし通しの政次郎の姿は他人事と思えない。序盤、赤痢で入院した幼い賢治に周囲の反対を押し切って寄り添い、息子の世話に、家長にあるまじき無上の喜びを感じて戸惑う場面が強く印象に残った。

家長の立場と父親としての感情の間で葛藤する父、コンプレックスを感じながらも最期まで父を愛した息子。賢治を主人公にしなかったことで普遍的な物語になった。

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