松本仁一「兵隊先生 沖縄戦、ある敗残兵の記録」
敗戦間近の沖縄。部隊でただ一人生き残った兵士は、ある家族に助けられ、沖縄県民と身分を偽って、米軍が設けた避難民キャンプの教師になる。
沖縄に送られた日本兵が何を思ったのか。ひとりの“兵隊さん”と人々がどう関わったのか。
「沖縄を踏みにじった本土」「虐げられた沖縄住民」では一人ひとりの人生は見えてこない。学校を少しずつ充実させていくキャンプ生活の描写は、これ以上ない人間賛歌だと思う。
この著者がなぜいま沖縄か不思議だったが、あとがきで執筆動機が明かされる。『カラシニコフ』と同様、多くの人に読んでもらいたい一冊。