滅びの園

恒川光太郎「滅びの園」

“異世界もの”と“終末もの”はエンタメ小説(特にライトノベル)や漫画の定番だが、それらを高度に融合させ、そこに哲学的な問いも盛り込んだ傑作。

ブラック企業で疲弊する鈴上はある日、記憶を失って別次元の世界に運ばれ、そこで平穏な家庭を築く。一方、地球ではプーニーと呼ばれる謎の生物の増殖で人類が存亡の危機にさらされている。

やがて鈴上の暮らす空間は想念の世界で、その破壊で地球が救われることが分かる。しかし、鈴上は自らの世界を守ろうと人類と敵対する。

荒廃する地球で日常生活を送り、希望を捨てない人々の姿が胸を打つ一方、空想の世界であっても平穏な暮らしを選ぶ鈴上の立場にも共感してしまう。現実とどう向き合うか。答えの出ない問題を扱っており、読後感は重い。

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